税理士5科目に合格された方にインタビューを行いました。
簿記論、財務諸表論は独学で、消費税法はTACで、所得税法と住民税はTACと大原を利用して合格された方です。
30歳から働きながら勉強されたようで、苦労した点や勉強時間、勉強方法について伺いました。
資格の大原とTACの良かった点と悪かった点も伺いましたので、これからどの学校の税理士講座に迷われてる方にも参考になるはずです。
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簡単に自己紹介をお願いします。
現在、39歳男性です。税理士試験は30歳のときから本格的に勉強を始め、38歳のときに5科目合格しました。
現在は、税理士登録を行い、独立して開業税理士として働いています。
もともと、学生時代は簿記や税務とはまったく関係のないグラフィックデザインを勉強していました。
22歳で学校を卒業し、その後、デザイナーの仕事に就いたのですが、仕事を進めていくうちに自分の仕事の適正に疑問を持ち始めました。
もともと細かな作業をコツコツ行うことが得意だった自分は、デザイナーよりも細かな数字を扱う経理職のような仕事が向いているのではないかと思い、簿記の勉強を始めました。
24歳で簿記の勉強を初めて1年で日商簿記3級と2級を取得し、それから1年をかけて日商簿記1級を取得しました。
そのとき、いっしょに勉強をしていた人から「日商簿記1級を合格したら、次は税理士試験を受けられる」ということを聞かせてもらいました。
26歳のときに試しに簿記論を受けてみました。
しかしながら、結果は不合格でした。税理士試験の難しさを知るとともに、諦めという形で一度は試験を受けることをやめました。
現在は簿記論、財務諸表論は受験資格はありません。
転機が訪れたのは、30歳のときです。デザイナーから転職し、勤めていた会社では、経理職として働いていました。
成長中の会社で、上場も視野にいれていたため、監査法人や税理士法人の方と接する機会が増えました。
監査法人や税理士法人の方は、自分より年下でも税理士資格や公認会計士の資格を持っている人が多数いました。知識の面でも当然、自分の方が劣っていました。
そのとき思いました。「この道でキャリアを積むのであれば、税理士や公認会計士の資格を目指すべきだ。そうすれば、自ずと知識はついてくる。目指すのであれば、一度諦めた税理士の資格を目指したい。」
こうして、30歳から本格的に税理士試験を受ける決意をしました。
働きながらの勉強は、時間の確保という点では大変でした。
しかし、勉強をして、知識を得たことは、仕事でも応用が効きましたので、勉強は楽しみながらできました。
30歳から税理士試験を目指して、39歳現在は開業されてバリバリ活躍されてる方です。
30歳から本格的に勉強を行い、試験を受けた科目別の試験結果は、以下のとおりです。
受験年度(年齢) | 簿記論 | 財務諸表論 | 消費税法 | 所得税法 | 住民税 |
---|---|---|---|---|---|
2015年(31歳) | 合格 | 不合格 | |||
2016年(32歳) | 合格 | ||||
2017年(33歳) | 不合格 | 不合格 | 不合格 | ||
2018年(34歳) | 合格 | 不合格 | |||
2019年(35歳) | 不合格 | ||||
2020年(36歳) | 不合格 | 不合格 | |||
2021年(37歳) | 合格 | 不合格 | |||
2022年(38歳) | 合格 |
まず、簿記論は、2015年(31歳)に一発合格をしました。
続いて、2016年(32歳)に財務諸表論を2回目で合格しました。
その後、2018年(34歳)に消費税法を2回目で合格し、ここまでは順調でした。
しかし、所得税法は4度受験し、ようやく2021(37歳)年に合格しました。
最後は2022年(38歳)で住民税を合格し、5科目合格を達成することができました。
税理士試験合格までにかかった勉強時間、勉強期間を教えてください。
すべての科目に共通していることは、毎日2時間から3時間勉強することです。
自分は休日も平日もバランスを崩さず勉強をしていました。
休日にまとめて勉強をするのではなく、平日も休日もフラットに勉強をするスタイルでした。
科目別の勉強時間や期間をあげると、まず、簿記論と財務諸表論は、簿記1級と範囲が被るところが多々あるため、毎日の勉強は、復習という感じでした。
ですので、勉強時間は、アウトプットがメインとなっていました。
日商簿記1級に合格されてから勉強したため、簿記論と財務諸表論は短時間で合格できたようです。
一方で、税法は、まったく勉強をしたことがなかったので、資格の予備校に通うことにしました。
半年かけてインプットを行い、残りの半年でアウトプットをしていくという形で勉強をしていきました。
しかしながら、最後に合格した住民税は、所得税と範囲が被るので、1年を通して、アウトプットが中心でした。
税法は、どの科目も1000時間以上は勉強をしたと思います。
その分、知識を得ることができたので、税理士として働いている今の実務にも大きく役に立っています。
大手予備校の記事では税理士合格まで合計3000時間かかると書かれています。しかし、5000時間は見積もりましょう。
簿記論、財務諸表論は独学でしたが、苦労話をお聞かせください。
簿記論に関しては、すべて計算問題であるため、過去問や市販の問題集をひたすら解いていけば、結果が出るだろうと思っていました。
もともと計算は得意なタイプなので、問題を解くという点では苦労はしませんでした。
一方、財務諸表論は、試験問題の半分が理論問題という点で、今まで経験をしたことがなかったので、苦労しました。
理論問題に対する回答の仕方などがわからず、慣れるまでは、難しく感じました。
過去問や市販の問題集の解答をひたすら暗記をしていました。
暗記をしても、計算のように明確な解答ではないため、これで本当に合っているのだろうかという不安な気持ちが常にありました。
簿記論、財務諸表論に問わず、独学で大変だったのは、周りに勉強をする人がいないことや講師、カリキュラムがないため、自分で合格までの道筋を立てて勉強をしなければならなかったことです。
しかしながら、簿記1級を合格したのだから、簿記論も財務諸表論も合格できるという気持ちを持って、自分を信じて勉強をしていました。
この方は日商簿記1級に合格してから、簿記論と財務諸表論の勉強をしたため、独学でも合格できたと思います。
一方、日商簿記2級レベル未満の方は資格の予備校に通われることをおすすめします。
ちなみに、独学の際に利用したテキストはTACの過去問題集らしいです。
税理士試験の勉強はどのような点で難しかったですか?
税理士試験は難易度の高い試験のため、どれも難しいですが、まず、全体的な視点で、大きく3つ取り上げます。
1つ目は、理論問題です。特に条文の暗記と応用です。税法というのは、法律であるため、条文の丸暗記が必要となります。
所得税法を例にあげると、教科書約200ページの文章をすべて暗記することが求められます。
そして、ただ暗記をすればいいというわけではなく、試験問題は、実務的なケースに当てはめてどうなるかという応用が求められます。記憶力と発想力の両方が求められます。
2つ目は、試験時間の使い方です。税理士試験はどの科目も2時間で試験が行われます。そして、2時間の試験時間は余ることはありません。
どれだけ勉強を重ねて知識を得ても、試験時間内に満足のいく解答ができなければ、合格できません。
特に税法は、理論問題と計算問題の2つに分かれるので、1時間ずつ使用するか、理論50分、計算70分で解くか等、事前に戦略を立てておかなければなりません。
また、試験中に解けない問題があれば、潔く諦めて、時間を無駄に使用しない等、試験中にも時間の舵取りを求められます。
3つ目は、テキストの勉強だけでは足りないということです。具体的に申し上げると、税法であれば、トレンドを知っておかなければなりません。
税制改正はもちろん、裁判例など、テキスト外の問題が出ることが多々あります。
例をあげると、2020年の所得税法の理論問題で出た馬券の所得区分(当時有名な判例が出た)や2021年の同じく所得税法の理論問題で出たコロナ関連の給付金、また、同年の計算問題で出た配偶者居住権(テキストに載っていない)等、実務的側面が求められる試験になってきています。
テキスト以外にも国税庁ホームページのQ&Aを見るなどをして、他の受験者の一歩上を行くことが求められます。
また、科目別の難易度ですが、自分は所得税法が最も難しかったです。
前述にもあるとおり、試験範囲の広さ、本試験でテキストの範囲外の問題が出てくること等、どれだけ模試等で良い点が取れても、本試験では通用しないということがあります。
ただ、合格ラインの点数は毎回低めなので、解答できない箇所は解答できなくても合格はできる科目です。
一方、住民税は、範囲が狭いため、ミスが許されない科目です。
特に計算は満点を狙わないと合格できないと感じました。
TACや大原の合格ラインは満点となっていませんが、自分は満点取らないと合格できないのではないかと試験結果を見て実感していました。
働きながら税理士試験に受かったコツや勉強方法を教えてください。
勉強時間の欄でも述べましたが、毎日勉強をすることです。
平日は仕事があるため、勉強をせず、土日まとめて勉強をするという方法よりも、毎日コツコツ勉強をすることをお勧めします。
その理由は、条文の暗記などは、毎日行うことにより頭の中にインプットされていくからです。スポーツと同じように、反復練習が重要となります。
また、平日は仕事で埋まり、土日は勉強で埋まってしまうと、休む時間や気分転換する時間が無くなってしまい、結果、勉強自体が嫌になってしまうのではないかと思います。
平日に勉強の貯金を作っておけば、土日は2~3時間勉強をして、残った時間は自分の好きなことをするというリズムにすることができます。
結果、休息や気分転換ができ、勉強が長続きします。
ですので、平日にどれだけ時間を確保できるのかが重要になります。
おすすめは、朝早く起きることです。
朝6時に起きて、7時まで勉強をすれば、1時間勉強ができます。仕事から帰宅後どこかで1時間勉強を行えば、合計2時間勉強ができることになります。
仕事をしながら、平日にまとめて、2~3時間勉強となると、ハードルが高くなりますが、時間を分散して行えば、案外できるものです。
通勤時間や昼休みも使えば、さらに幅は広がります。
また、勉強の仕方の工夫も必要です。
例えば、理論暗記であれば、前年と同じ問題は出ないため、前年に出た問題は、暗記せず、少しでも勉強する内容を少なくすることや、暗記は文字を目で追うだけではなく、耳も使って暗記をすることです。
おすすめは、自分で音読した内容をレコーダーで録音し、聴くことです。そうすれば、教科書が開けない場所や通勤中の電車の中でも勉強をすることができます。
計算問題は、総合問題を解くと最低でも1時間はかかります。
また模試のように理論も計算も通して解こうとすると2時間かかります。
ですので、こういった問題を解くときは、あらかじめ時間を確保し、この時間でやる!と心に決めて挑むことが重要です。
公認会計士試験と比較して、税理士試験は働きながらでも合格を目指しやすい資格と言われてます。
所得税法、住民税は資格の大原に通われたようですが、良かった点、悪かった点を教えてください。
大原で良かったのは、練習問題や模試などの理論の採点や試験問題の難易度が高めに設定してあった点です。
それにより、自分の実力の未熟さがわかるため、有頂天にならず、まだまだ頑張ろうという気持ちになることができました(人によっては、悪い点になるかもしれません)。
模試の解答をPDFで添削し、サイト上で見られるのも良かったです。
また、住民税に関しては、TACの模範解答と大原の模範解答が違うなどのケースがありました(2022年試験、甲の長男の雑損控除の取扱い)。
しかしながら、結果として、大原の解答で行っていた自分が合格できたので、大原の模範解答が正しいと実感できました。
所得税や住民税に限った話かもしれませんが、大原の方が本試験の意図に沿ったテキストや解答なのではないかと思います。
悪い点というとあまり思い当たりませんが、大原の理論サブノートはTACの理論マスターと比較すると、サイズが少し小さいので、文字も小さく見づらいということはあるかもしれません。
反面、持ち運びは便利なので、これらは一長一短であるのかなと思います。
消費税法、所得税法、住民税はTACに通われたようですが、良かった点、悪かった点を教えてください。
個人的な感想かもしれませんが、消費税法は、講義してもらった先生が良かったです。
良かった点としては、声の張りがよく頭に定着しやすい点や試験勉強だけではなく、実務的側面からも色々と教えてもらえたことです。
特に消費税は、税務訴訟が起こりやすいことなどを講義の中で言っていたことが、印象深いです。
所得税、住民税も印象に残っているのは、教えてもらった先生です。
試験の予想問題を良く的中させていました。
また、消費税のように情熱的な先生ではありませんでしたが、ゆっくりと聞きやすい講義で、頭に残りやすかったです。
ただ、良くない点かもしれませんが、大原の欄でも記載しましたが、住民税の解答は大原と違っていた点がありました。
また、住民税の理論マスターは、試験に出ないような細かな部分までが記載されているため、ボリューム感としては、大原ぐらいがちょうど良いのではないかと思いました。
資格の大原、住民税の理論サブノート
TAC、住民税の理論マスター
大原とTACを比較してどうでしたか?
最終的に所得税と住民税は大原のテキストや模試を使用して合格したため、これらの科目は大原の方が本試験にフィットしているのではないかと思いました。
TACの欄で記載したとおり、講義はTACの方が印象深かったため、自分としては、先生はTACの方が心に残りました。
講義の質はTAC、効率性は資格の大原ということですね。
しかし、TACは特に研修制度はないみたいなので、当たりはずれがあります。逆にカリスマ講師のような分かりやすい講師もいるみたいです。
大原は研修制度で全講師同じ教え方をしてるため、当たりはずれが少ないという特徴があります。
最後に、これから税理士を目指す方にエールをお願いします。
税理士試験というのは、国家資格であるため、難しい試験です。
しかしながら、科目合格制度であるため、地道に努力を積み重ねていけば、合格できる試験です。
また、一度資格を取得すれば、税理士として仕事ができるため、自分の将来の道が広がることは間違いがありません。
新しい何かに挑戦したい、大きなことを成し遂げたい、自己実現をしたい、経理の仕事だけでは将来のキャリアが不安、そういった方は、ぜひ税理士試験を受験し、合格を勝ち取ってください。